不眠日記

寝れない夜に書く日記

「ネクロポリス」を読んだ

生活に疲れて娯楽を楽しむとき,過去に体験して面白いことがわかっているものを選んでしまうということがよくあります.例えば音楽,アニメ,映画,ゲーム,漫画など.僕にとってその最たるものが小説で,好きな小説は繰り返し繰り返し読みます.通しで10回読んでる本とかはざら.虐殺器官は多分30回ぐらい読んでる.今日読んだ本「ネクロポリス」もそれで,高校生の時に一度読んだことがある.

ネクロポリス」の作者は恩田陸で,他の著作としては「Q&A」「常野物語」「上と外」「ねじの回転」などがある.他にも有名な作品はいくつかあるんだけど,僕が読んで面白かったのはこのあたり.とくに「Q&A」はめっちゃ面白いので未読の人はぜひ読んでほしい.

 

ネクロポリス」の魅力はその「地続き感」だと思う.

僕はファンタジーが好きなんですが,ヨーロッパのファンタジーはその世界に実感が持てないという欠点がある.実感が持てないというか「地続き感」が感じられない.ハリーポッターを読んでその世界が自分の世界と地続きであると感じる日本育ちの人はいないだろう.なぜなら西洋風の城というのが身近にあるわけではないし,西洋の森の恐ろしさというものを肌で感じられる機会は限られている*1.それが西洋ファンタジーのいいところでもある.未知の世界に没入して思いを馳せるという楽しみ方ができる.

ネクロポリス」はそこが西洋ファンタジーと違っている.舞台となる「アナザーヒル」は英国の近くにある地域だが,古代から近代にかけて日本人が度々黒潮に乗って流れ着いていたため,英国文化と日本文化がごちゃまぜになって融合している場所,という設定になっている.例えば建物は英国風のレンガ造りの建物が立ち並ぶが,町の入り口には巨大な鳥居がそびえ立ち,人々が語る伝承は日本の伝承と多くの共通点を持つ.

このような舞台設定に基づいて「ネクロポリス」は,ファンタジーの物語を西洋という未知の舞台*2で展開しつつ,その土地に根付いた日本発祥と思われる伝承や習俗などを物語に織り込むということをやっている.この物語の構造が僕はとても好きで,遠い未知の世界に憧れをいだきながら,一方でその物語が自分と地続きであるということが感じられるのが良い.特に伝承とかはそれを実際に聞いて育っていないと感じられないものがあると思っていて,それを使ってファンタジーを書こうとするとこういう形態になるのかなとも思う.

一度読んだことがある本だけど,筋をほとんど忘れていたのでとっても楽しめた.物語には人を没入させ現実を忘れさせる力がある.人間は定期的に物語を摂取して心の体力を回復させる必要がある.僕にとっては小説が最適の手段なのだなと思う進捗の出ない日曜日だった.

 

ネクロポリス 上 (朝日文庫)

ネクロポリス 上 (朝日文庫)

 

 

ネクロポリス 下 (朝日文庫)

ネクロポリス 下 (朝日文庫)

 

 

Q&A (幻冬舎文庫)

Q&A (幻冬舎文庫)

 

 

光の帝国 常野物語 (常野物語) (集英社文庫)

光の帝国 常野物語 (常野物語) (集英社文庫)

 

 

*1:もちろん僕も感じたことはない

*2:私にとって